第五百七十七話：いつもそこにいる人

いつもの場所に、いつもの人がいる。
ヴァナでは、そういう存在の大半はNPCなのだけれど、中にはそのサーバーに住む人の大半がお世話になるようなプレイヤーキャラクターがいる。

どのサーバーにもいるのかなぁ？
とりあえずチョロが遊んでいるアレクサンダーサーバーには、ログインしたら必ずお世話になっていると言っても過言ではない人がいる。

昔、まだ大半の人がレベルキャップに達していない頃。
もちろん自分もまだ1つもキャップに到達しているジョブがない頃。
ほぼ全員が【レベルあげ】という遊びをヴァナでの主な活動のうちの1つに取り入れていた頃。
ジュノに【古川さん】がいた。

古川さんの正式名称は【Oldriver】という。
NPCではなくPCだ。
そのPCは、いっつも絶対にジュノ上層のガイドストーンにいて、様々な素材やちょっとした食事を売っていた。
LBJでは「リバーちゃん」「古川さん」などの名称で親しまれていた。

「あ、しまった。アレ買い忘れた～、リバーちゃんで売ってない？」
「1Dもいらないから古川さんで買おう」

こんな会話が当たり前のように交わされて、古川さんのバザーは日常の活動になくてはならない、とても便利なものだった。
古川さんは、たまに【Happyriver】という人に変わったりする。
完全な倉庫キャラじゃなくて、それぞれ少しずつ育っていたりする。
タル、ガル、エルがいたような記憶がある。
ヒュームとミスラはいなかったような…？
いたっけ…？

とにかく、みんなが【〇〇river】という名前で、リバーファミリーだったのだ。
ジュノの各層のガイドストーンはその頃バザーのメッカで、ガイドストーンの四隅に大抵他にもバザーが立っていた。
もしかしたら古川さん以外の3名の誰かが、古川さんと同じものを古川さんより安く売っていた日もあったかもしれない。

でも、自分はリバー商店の商品ラインナップが欲しいとき、他のバザーを見たことがない。
【安くて色々揃ってるリバー商店】に安心感も抱いていたし、時々少しずつ変わる入荷商品アピールのバザコメが好きだったからだ。

チョロが古川さんでよく買ったと記憶しているのは、カザムパイン。
競売は結構高くて、低地エルシモが落ちている時はカザムまで行かないと買えないパイン。
でも、とてもお手軽にジュースに出来てリフレ効果を得れるので、古川さんでちょこっとパインを買えるのがとても便利だった。

カザムで買うよりちょこっとだけ、本当にちょっぴりだけ高いけれど、競売に比べると断然安かった。
単品で買えるのもありがたかった。

あの、微々たる儲けの値段設定で、毎日どのくらい利益が出ていたのかなぁ。
あんなに認識されるほど【いつもそこにいる】って、自分の想像より大変な事だと思う。
NPCのショップよりもなんだか親しみがあって、チョロはリバー商店が大好きだったのだ。

でも、みんなの拠点がジュノじゃなくなってしばらくしたとき、リバー商店はジュノから姿を消した。

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みんなの拠点がアトルガンになってからしばらくして、アトルガン白門にいるNPC【Kaduru-Haiduru】通称タル兄の横に、エル♀のPCが常に立っているようになった。
名前を【Pmm】と言う。

Pmmさんは、アトルガン白銀貨を売っている。
タル兄は、アトルガン白銀貨でジュノか所属国に飛ばしてくれるNPCだ。
その横で該当アイテムを売っているPmmさん。

チョロのホームポイントはもう随分前からずっとウィンダスだけど、たまたま白門にホームポイントを設定した時や、ジュノに行きたいとき、かならずタル兄に飛ばしてもらう。
最初は、戦績を使って白銀貨を取得してタル兄に飛ばしてもらっていたんだけど、自分は過去に移送の幻灯が使えなくなったほどのアトルガン戦績貧乏。
移動用白銀貨代に戦績を使っていると、あっと言う間に生活に支障がでる。
なので最近はずーーっとPmmさんから白銀貨を購入してタル兄に飛ばしてもらっている。

戦績をもっと貯めるってのは諦めるとしても、ギルの節約を心掛けるなら、競売で1セット落として常に持っておくのが一番安いのかな？
でも、それでアイテム1枠が埋まるのが辛い。
なので、飛びたい時にその場で白銀貨が買える【Pmmタル兄切符売り場】はチョロにとってものすごく便利なのだ。

最初はPmmさんしかいなかったタル兄周りに、今はバザーが2～3名並んでいて、みんな白銀貨を売っている。
他のバザーを見つけたとき、チョロは古川さんの時と違って、そっちもチェックした。
Pmmさんより安く売ってないかなぁ？なんて思ったのだ。

でも、いつみてもPmmさんはその場の誰よりも少しだけ安いか、または全く同じ値段設定だった。
Pmmさんより安いバザーを見たことがなかった。

そんな日々が続き、今ではチョロはもうPmmさんからしか買わなくなった。
他の人のチェックをしなくなった。
Pmm商店に完全な安心感を抱いたのだ。




Pmmさんが誰のキャラクターなのか、チョロは知らない。
いつもアノンで、バスの服を着ているから、Pmmさんは古川さんとは違って倉庫キャラだと思う。
だから、きっとこのサーバーのどこかにPmm商店の社長さんがいるはずだ。
その人は、こんなにもみんなに定着した自分のバザーキャラに、どんな想いを抱いているのかなぁ？

ただの倉庫でも、長く使うとなんだか愛着がわいてくるのに、こんな風に地元密着(?)キャラを作れたら、自分の分身であるメインキャラに抱く想いと同等の愛着が沸くんじゃないかな～なんて思う。

ヴァナで誰かと遊んで楽しく過ごす以外に、こんな風にヴァナで色んな人と関わるっていう楽しみ方も、面白いなって思う。
もちろんそれ【だけ】じゃイヤだけれども！

いつもそこにある安心感。
常に他店の状況を把握し、消費者に優しく、在庫を切らさない努力。
リアルの商売でそれを貫くのはとても大変な事だけど、ヴァナでもすごく手間がかかる大変な事だろうなーって思う。

たまにメンテ明けに速攻でインしたときなんかにPmmさんがいないと「ちょ、不具合？！」と思ってしまうほど不便だ。
昔のジュノの古川さんに似た感情を、Pmmさんに抱いている。

もしかしてリバー商店とPmmさんの社長さんは同一人物だったりして！なんて妄想しながら、今日のチョロ・ログアウト。